第69回全日本社会人選手権大会
戸田ボートコース
本大会では碧水会最強スカラーの組み合わせとなる「まつあらペア」(松村治夫S47さん&荒川裕明S52さん)がBカテゴリー(1000m)のダブルスカルに出場しました。
Aカテゴリー(2000m)に比べBカテゴリーは二線級のレースとみなされるため、うまくいけば表彰状がもらえるチャンスがあると考えました。ところが現実は、平均年齢68歳のまつあらペアがほとんど20代クルーばかりのレースにいきなり紛れ込んでしまったという状況になりました。
バウを漕いだ荒川さんはそうした年齢差との戦いの模様を楽しくおかしく記した参戦記を寄せてくれました。ぜひご一読下さい。
◆レース動画
7月6日 予選(タイムトライアル)
7月7日 決勝
◆レース記録 2X 1000m
◆出場者の声 荒川裕明S52
社会人選手権のBカテゴリーは昨年から新設された種目で今年第2回目です。年齢区分なしのシニアA及びシニアA以外の年齢別(シングルスカルの40、50、60歳以上)のレース距離が2000mなのに対し、このBカテゴリーは1000mの距離であることが特徴です。この種目が新設された意図は別として、参加者はぶっちゃけ二線級と言えますが、年齢区分はありません。昨年も私はダブルスカルでエントリーしたのですが、戸田の藻の氾濫により開催場所が急に長沼に変わった途端、このBにエントリーしていた参加クルーが軒並み辞退、我々1艇ではレース不成立となり、Bのダブルは今年が実質第1回目の開催となったのです。ま、その程度の意気込みのクルーが多い、という事が言いたいのですが。なので、お腹の突き出た人や爺さんに手の届きそうな人が乗ってるクルーも参加しているのでは、あわよくば3位以内で表彰状の可能性もあるのでは、と下心も膨らみ混ぜて貰う事に致しました。
一方、Bとはいえ社会人選手権ですから予選、決勝とあり、事前艇計量、ドーピング検査、説明会への参加義務、等もあり、私と松村さんとは5日の午後から共同艇庫に宿泊することとしたのです。もっともBのダブルのエントリーは6艇でしたので、結局6日のタイムトライアル(TT)と7日の決勝(本番)という事になりました。
説明会で貰った資料によると、相手は警視庁、東京海上日動、日本生命、三菱商事、全諏訪、それに我が碧水会。年齢を見ると全諏訪のバウが50歳でしたが、他は22歳から28歳のぴちぴちした若者、平均68歳の碧水会は印刷ミスに見えてしまう。
6日のTTでは翌日を考慮しシャカリキには漕がない、というプランで臨んだが、相手は皆さん引き締まった良い体格をしてらっしゃる。スタート位置に付けると審判より碧水会のタイツの色が違う事を指摘される。警告二つで失格と確か書いてあった。さすが社会人選手権、マスターズは皆さんTシャツを揃えるだけでタイツは見ないのに。少し動揺するが松村さんには聞こえないようで落ち着いている。
それでもスタートでは飛び出し、2位か3位に付ける。その後500m近くまで4位をキープ、警視庁と張り合うも終板に抜かれ結局9秒差で5位、運よく東京海上がへたくそで6位を守ってくれた。
本番は小雨そぼ降る朝8時30分、のはず。8時10分に女子SSがスタート、次がダブルと記憶した松村さんはすぐに付けようとする。しかし、予定が変わったアナウンスは無かったので、恥ずかしながら隣の東京海上ダブルに「ダブルはこの次ですか?」と聞くと、「この次の次です」。やっぱり8時30分だ。しかし、レース直前で気の張っている松村さんになかなか声が届かず、回して付けようとする。この一連の大声のやり取りの中で、周囲に溜まっているダブルを気にしながら、「次の次ですってー!」となんとか伝える。優先席相当の爺ちゃん達には何があっても負けられない、と思われるとまずい、とちらっと思う。
兎に角もアップ後体が冷えない程度に動き、スタート位置に付ける。「よし、思い切ってピッチ上げて行くから付いて来いよ」などと松村さん、ちょっと嫌な予感はするがタイツの色違いが審判から見えないようにそれとなく腕で隠す。
松村さんの指導もあり、スタートはシャカリキに力を入れなくともリズムで加速し、あまり疲れずにコンスタントに持っていきそこそこ艇速が上がるくらいのレベルにはなってます、はい。この時も6位を守ってくれそうな東京海上を除く他艇と遜色なく良いスタートがきれた。ところがコンスタントに入るころ隣の三菱商事のオールが切り込んだのか急に遅れた。え?上位3位確実の1艇が欠ける? そうすると・・、警視庁に勝てば夢の社会人選手権表彰台?? もしかしたらTVに映れる? その時考えてはいけない良からぬ妄想が次々二人の頭に去来する。チャンス、と思ったか整調は11本目にコンスタントレートに伸びずそのまま突っ走る。いくらなんでもこのままでは持たない、と思いつつも必死に大先輩に食らいつく。300mを過ぎて疲れからかバランスが振れはじめ、フォワードでブレードを擦る事が多くなり、バタバタしだす。落ち着いて丁寧に、と気を引き締めるがやはり次第にレートは落ち始める。一方落ち着いてしっかり漕いでいたのは遅れて出てきた三菱商事、700mで警視庁、三菱商事、碧水会が横一線で3位争いを展開! 一見壮絶な戦いに見えるがその実態は、濁流を我が水と泳ぐ魚の如き三菱商事、濁流に流される木の葉の如き警視庁、そして濁流にゴロゴロ動かされる川底の石の如き碧水会、であった。それでも900mからは強蹴りでスパートをかけ艇速は上がるが落ち着くべきところに落ち着き、警視庁に6秒差の5位で終了したのです。因みに濁流の魚は日本生命をも抜き去り2位にまで浮上したのです。やはり1~6位まで、この順位が実力値のようでした。
雨の降る中、早朝から応援に来てくれた方々、またへたくそな後輩を丁寧に教えてくれた松村さんにも感謝いたします、有難うございました。